勇者王リリカルガオガイガー THE MYTHOLOGY
第十一話「機動六課のある休日【前編】」
◆新暦75年7月初旬頃
薄暗いラボでメンテナンスカプセルが開き中から灰色の髪で鋭い目つきをした男性が出てくる。
己の両手を握ったり開いたりなど、各部の身体機能のチェックを行い異常が無いのを確認する。
それから近くに置かれているロッカーから、服を取り出し着替える。
男は着替え終えると、ある方向へと歩き出す。
数分の距離を歩いた先には、厳重な警備が敷かれた扉の前へと辿り着く。
扉の警備には、ガジェット・ドローン1型が4機、3型・4型が各2機ずつ配備されている。
男は、扉に設置されている網膜照合と指紋照合のキーの前に立つ。
慣れた手つきで照合を終わらせ、扉が開く。
扉の中へと進み、巨大な樹木と化した装置の前で足を止める。
「…ソフィア博士」
ゾンダーメタルプラントへと変化したメイガスの生体コンピューターと成っているオリジナルが愛している筈の女性を見つめる。
「あなたを救い出すまで蛇の道を進みます。我はメイガスの剣…メイガスを作り上げた博士は、我が母と言っても過言ではない……では」
ウォーダンは眠り続けるソフィア博士を後にして、戦場へと赴く。
それが己の心に背く事であろうとも彼は突き進む。
確固たる信念の元に。
ゾンダーとガジェットによる機動六課とGGGへの介入事件の後始末が終わり時間の余裕が出来た夜、なのははティアナと共に暗闇の海を見ながら話を始めた。
そんな彼女たちを草陰から見守るスバル・エリオ・キャロ、そしてフェイト。
なのはは過去の自分が無理を続けた結果、大怪我をして仲間に多大な心配をかけてしまった出来事を話す。
「あの時は、身体に結構負担が貯まってる事に気がつかなかったの。寧ろ、レイジングハートに負担をかけてるって思ってたぐらい……でもね、
身体がベストな状態だったら不意打ちにも反応できたはずなの。その時からかな、今までの自分がどれだけ無茶な事をし続けていたかを考え始めたのは」
小学3年生の時は、9歳の身体で強力な集束魔法を何度も使い、闇の書事件ではカートリッジシステムの使い過ぎなど小さな身体で無茶を続け、
それらの結果は"撃墜"だ。
ヴィータちゃんに直ぐに助け出されていなかったら、今みたいに教導官として働くことなど出来なかっただろう。
なのはは、自分の経験から教え子達には無茶な行動を慎んでもらい丁重かつ着実に実力が付く訓練をさせて来ているのだ。
ティアナは遠くを見つめる彼女の横顔を見て、ついこの前まで思っていた嫉妬心など消えうせてしまった。
この人は自分やスバルたちを、全身全霊を賭けて育てようと頑張っている。そんな教官を上司に持った自分は幸せ物だと感じ頬に冷たい何かが零れる。
「ティアナもみんなもまだ、でこぼこだらけの原石の状態。でこぼこだらけだし、本当の価値も分らないけど、でも磨いていくうちに、
どんどん輝く部分が見えてくる。エリオはスピード。キャロは優しい支援魔法。スバルはクロスレンジの爆発力。
3人を指揮するティアナは射撃や幻術で仲間を守って知恵と勇気でどんな困難も乗り越えていける。
そんなチームが理想系で、ゆっくりだけど少しずつ近づいている。凱さんたちは元々戦闘能力に長けてるから、魔法関係の特訓をさせてるけどね」
なのはの話を聞いて、ますます自分がどれだけ恵まれた場所に居るのかを再確認するフォワードメンバーたち。
そして、なのははティアナの射撃は避け難くて応用すれば砲撃魔法にも変わる万能な魔法だよと助言する。
更に、模擬戦で行った行動も強ち間違いではないと言い、ティアナが横に置いていたクロスミラージュを手に取るとシステムリミッターを解除し手渡す。
なのはからデバイスを受け取り、モード2と呟いた瞬間、新たなモードであるダガーモードへと変化する。
「ティアナは執務官希望だもんね。ここを出て、執務官を目指す時どうしても個人戦が多くなるし将来を考えて用意はしてたんだ」
追い討ちの言葉に、ティアナの目からは大粒の涙が流れ始める。
そんなティアナの肩に手を回し、抱き寄せたなのは。
「クロスもロングも、もう少ししたら教えようかと思ってた。でも、出動は今すぐにでもあるかもしれないでしょ?だから、
もう使い慣れている武器をもっともっと確実なものにしてあげたかった。だけど私の教導地味だから、余り成果が出てないように感じて辛かったんだよね…ごめんね」
ティアナは、その言葉の後になのはの胸元で謝り続けた。
そして、夜が開け早朝の訓練に向かう時にはティアナの顔には落ち込んでいた時の様な影は微塵も無かった。
訓練所へ向かう途中で、合流したフェイトからある話を聞かされるスバルたち。
「技術に優れていて華麗に戦える魔道士をエースって呼ぶでしょ。その他にも優秀な魔道士を現す呼び名があるって知ってる?」
互いに顔を見合わせる新人たち。
「その人が居れば困難な状況を打破できる。どんな厳しい状況でも突破できる。そういう信頼を思って呼ばれる名前…」
フェイトの次の言葉を、息を呑んで待つ新人たち。
「ストライカー」
その単語に成るほどと言う感じに声を合わせて驚く4人。
「なのは、訓練を始めて直ぐの頃から言ってた。うちの4人は全員一流のストライカーに成れる筈だって。だからうんと厳しく、だけど大切に丁寧に育てるんだって」
その話を聞き、なのはさんの訓練がどれだけ自分達を大切にしているモノだと感じる。
「それからね、凱さんも言っていたよ。4人とも小さな"勇者"だって」
「ゆ、勇者ですか?あの世界を救うとかの」
ティアナの疑問に頷くスバルたちに、フェイトは微笑みながら答える。
「凱さんが言う"勇者"はね、どんな窮地であっても逃げ出さず、人々を守り、仲間を信頼し、自分の力を限界まで引き出せる勇気ある者って意味だよ」
彼が自分達を認めてくれている事を知り、笑顔になる4人であった。
そして、なのはと副隊長たちとブレイブ分隊の3人が待つ訓練施設へと辿り着き大きな声で挨拶をする新人4人の顔は以前にまして輝いていた。
いつもの早朝訓練と模擬戦を終えて息を切らしながら、腰を下ろして身体を休ませる新人フォワードメンバーたち。
その横で早朝訓練と模擬戦を見学しに来た命から渡されたタオルで汗を拭う凱とルネ、Jは涼しげな顔をしながら腕を組んでいる。
「はい、今日の訓練は無事終了。みんな、お疲れ様。でね、実は今日の模擬戦は第二段階への見極めテストだったんだけど」
なのはの一言を聞き、一斉に声を上げる新人たち。
それもそうだ。何も聞かされずに模擬戦をやり、その結果次第で落とされる可能性があるのだから。
なのはは、後ろにいるフェイトとヴィータに、今回の模擬戦での結果を聞いてみる。
「合格」
「「はや」」
フェイトの即答に驚くスバルとティアナ。
「まっ、こんなにみっちりやってて、問題があるようなら大変だってことだ」
ヴィータのもっともな言い分を聞き苦笑いをするエリオとキャロ。
「私もみんな良い先いっていると思うし、これにて第二段階終了」
新人たち4人は万歳しながら、喜び合う。
「デバイスリミッターも一段階解除するから、あとでシャーリーの所へ行って来てね」
「明日からはセカンドモードを基本形にして訓練すっからな」
「「「「はい!」」」」
その時、ヴィータの言った意味に気づくキャロ。
「えっ?明日」
「ああ、訓練の再開は明日からだ」
「今日は私たちも、隊舎で待機する予定だし」
「みんな、入隊日からずっと訓練漬けだったしね」
そういえば、そうだったかなと顔を見合わせる新人たち。
「まぁそんな訳で」
「今日はみんな1日お休みです」
なのはの一言に喜び4人。
「町にでも行って遊んでくるといいよ。あ、それから凱さんたちも休暇を取りませんか?ゾンダーとの戦闘などで休み取れていませんでしたし」
「いや、俺は一度休んだからな。ルネとJで休暇を取ればいいじゃないか?」
前に落ち込んだ際に休暇を取ったことから、自分は休暇入らないと断ろうとする。
「あの時は、直ぐに現場に来て貰いましたし、あなたが居なければ被害がもっと出ていたかも知れません。ですから、あの時の御礼って事で」
「なのはちゃんの言うとおりよ。凱も休暇をとって遊んでらっしゃい。今日は私も待機だから付き合えないけど、何かお土産お願いしちゃおうかな」
なのはと命のダブルアタックに根負けした凱は、わかったと答えて休暇をとることにした。
こうして、機動六課の新人たちの短い休暇が始まる。
朝食を取りながらミッドチルダのニュースを見ていた大河幸太郎長官は、ある人物の姿を見て食事をする手を休める。
『魔法と技術の進歩と進化、素晴らしい物ではあるが、しかし!それが故に我々を襲う危機や災害も10年前とは比べられない程、危険度を増している。
兵器運用の強化は、進化する世界の平和を守るものである!』
映像の中で演説をする男。レジアス・ゲイズ中将/防衛長官へ向けて多数の拍手が鳴り響いている。
『首都防衛の手は未だ足りん。地上戦力においても、我々の要請が通りさえすれば地上の犯罪も発生率で20%、検挙率では―』
このレジアス中将と言う男の事は、この世界に来てから一般常識や首脳達の名前を調べていた時に知った。
入局40年の大ベテランであり武道派と知られており、地上本部の数多くの実権を握る程の大物で事実上、地上本部総司令。
ゾンダーとの戦闘の際のGGGでの自分の役割と似ている人物だと考える大河長官。
世界の平和を望む故に、戦力の増強が必要不可欠と言う事は賛同できる。
しかし、この演説には何故か引っ掛かるものがある。
それが何かとは分からないが、長年の直感なのだろうか。大河長官は、そんな感覚をこの演説を見て思うのであった。
起動六課の隊舎にある車庫で、ヴァイス陸曹が赤い外装のバイクをメンテしている。その横で私服姿のティアナの姿があった。
「貸すのは良いけど、こかすなよぉ。プロテクターは?」
「自前のオートバリアで」
「しかし何だな、オラァ時々お前らの訓練とか見るだがよ…最近お前、立ち回りが少し変わったよな」
「あ、はい」
言い当てられ、少し驚くティアナ。
「お前今までは、シングルでもチームでもコンビでも動きが全部同じだったけどよぉ。最近は臨機応変に成ってきているように見えるぜ。
センターらしい動きになってきたんじゃねぇかぁ?」
「みなさんのご指導のおかげで」
心から、そう思うように成っているティアナの顔には曇りなど無い。
ヴァイスはバイクのメンテが終わらせ、エンジンを起こしてみる。
「よし、良い感じだな。それっ」
ヴァイスからバイクのキーを投げ渡され、あわてて受け取りティアナは彼に向かって笑顔で返事をする。
「はい」
ヘルメットを被り、バイクへ乗るティアナ。
「あの、これ聞いちゃ駄目だったら申し訳無いですけど」
ティアナの畏まった声に、何の話かと思うヴァイス。
「ヴァイス陸曹って魔導士経験ありますよね?」
「まぁオラァ武装隊の出だからな。昔は『その旨をよしとする』とか、『始めましてだな、ガ○○ム!』とか言ってたぐらいだからよぉ。
ど新人に説教くれられるぐらい程度には…な」
ヴァイスの少しきりっとした目線に、少しビクッとする。
「とはよぉ。昔っからヘリが好きでよぉ、そんで今はパイロットだ」
話を聞き入っていたティアナに、手の甲を振って行かせるポーズをとる。
「ほれ、相方が待ってるんだろう?行ってやんな」
「ありがとうございます」
そう言い終えるとティアナは、バイクに乗ってスバルが待つ隊舎前へと向かった。
起動六課の隊舎前では、なのはと私服姿のスバルと凱が雑談をしながらティアナが来るのを待っていた。
凱の私服は、シャツの上から濃い茶色のジャケットを着た風貌だ。
昔は、仮面○イダーやキ○イダーなどの主役が着るような服装だったためとても変だったが、ヴァイスなどの助言で今の服装に落ち着いている。
そんな彼の横には、バイク形態のガンドーベルが置かれている。
Gストーン搭載型だが、超AIを装備していないためGGGの隊員やボルフォッグの命令に従う。
今日は凱の足として、GGGから借りてきたのだ。
3人がしていた雑談の内容は、以下の通りだ。
『私だけ、ガンダムに出てないね…中の人の話だけど』
『そ、そんな訳無いじゃないか。ほら、俺の中の人が主人公しているガンダムに名無しだけど出ているじゃないか』
『名無しですよ…それに、凱さんの中の人は08では主人公、種では美味しいキャラクターをやってるじゃないですか。それからスバル』
『えっ、何でしょうか。なのはさん』
『スバルも、最新作のガンダムで名有りの準ヒロインをやってるみたいじゃない』
『え、あの…それは』
など、シビアな会話が続くかと思われた瞬間バイクに乗って現れるティアナの登場で場の空気は元に戻った。
「じゃあ、転ばないようにね」
3人を見送るなのはの表情はいつもの笑顔である。
「大丈夫です。前の部隊では殆んど毎日乗ってましたから」
「ティア運転上手いんです。あ、お土産買ってきますね。クッキーとか」
なのはは、お土産とか気にしないで、しっかり遊んで来なさいと笑顔で言う。
「凱さん、2人をよろしくお願いしますね」
「ああ。でも寧ろ、俺が助けられる方かもな。あまり町に出歩いていないからね」
にこやかな笑顔で道案内など何でも頼ってくださいね。と言うスバルとティアナに笑顔で頼むと答える凱。
そうして、3人はバイクで町へと繰り出して行った。
スバル達が向かった直ぐ後に、隊舎からライトニングの3人が出てくる。
エリオとキャロは、保護者っぷりを大爆発させているフェイトに心配されながら私服で町に出かける準備を終えている。
「ライトニング隊も一緒にお出かけ?」
「「はい」」
「はい。気をつけて」
なのはは、そんな2人を笑顔で送り出すも、2人の後ろで心配する保護者が1名。
遅く成らない内に帰りなさいや、夜の街は危ないから気をつけるようになど保護者節爆発のフェイトの姿があった。
そうしていると、1台の車が隊舎前で止まる。
「お待たせしました。さぁ、エリオ隊員とキャロ隊員、駅までお連れします」
車の正体はGGG諜報部に所属するビークルロボであるボルフォッグであった。
駅で待っているルネとJの元へ2人を連れて行くためにやってきたのだ。
本当は、そのまま護衛任務に就きたかったボルフォッグだったが、この後で陸士108部隊の隊舎へ向かい手伝いをしなければ成らない。
その訳は、ナカジマ三佐が合同捜査本部を作るとの事でシグナムとヴィータがその打ち合わせのため向かうからだ。その後で聖王教会にも寄るらしい。
GGG代表として、火麻参謀も行くためその護衛として行くことになっている。
ボルフォッグに乗り込み、シートベルトをしたエリオとキャロを見送るフェイト。
「2人とも、Jさんとルネさんの言うことを良く聞くんだよ」
元気良く「はい」と答えた2人は、ボルフォッグに乗って駅へと向かった。
駅前でJとルネと合流した2人は、ボルフォッグにお礼を言いホームへと向かっていった。
ボルフォッグは涙ながら、2人を駅へと連れて行った後に火麻参謀の元へと向かうのであった。
ミッドチルダの中央区画の都市で、休暇を満喫する機動六課のフォワードメンバーたち。
スターズのスバルとティアナは、ブレイブの凱と共にバイクでツーリングを楽しみ、その後ウインドショッピングへと繰り出し、
ライトニングのエリオとキャロは、ブレイブのJとルネの同行の下、健全な初デート?を満喫している。
シャーリーから貰った予定表を忠実にクリアしようと奮闘する幼い2人。
そんな2人に付き添っていくルネとJ。
遠目からも、エリオとキャロのカップルは可愛らしく微笑ましく見られている。
その一方、Jとルネの長身の男子と長身の美女のカップルの姿は人々の眼先を釘付けにしていた。
Jの服装は、白いジャケットに縦縞のシャツを着こなしている。数年前のゾンダリアンでの私服とは天と地の差である。
それに対しルネの服装は、ワインレッドのカシュクール風Tシャツにジーンズを着てショルダーバッグを肩掛けている。
2人の姿はまるで、モデルか芸能人と見間違えるほどのルックスであった。
「あぅ~凄くカッコカワイイ!おっもちかえりぃ~♪」
「お持ち帰りは駄目だ。お持ち帰りしたいなら、あっちのカップルにするんだな」
白いベレーを被った中学生ぐらいの少女に、近くに居るカップルと思われる男女を指す少年。
「おい、私の服装とあの女の服装…どっちが良いと思う?」
「何を言い出すんだ。俺たちは協力者という間柄だろう。何故、お前の服装を褒めなければ成らない?」
「…ただ聞いてみただけだ。女性の扱い方は相変わらず下手だな」
ゴスロリファッションと思われる服装でライムカラーのロングヘアーをした女性と、茶色いジャケットを着た長身の高校生ぐらいの青年が立ち話をしている。
そんな人々の話題の元となっている2人だったが、自分達の格好が注目されているとは思ってなく何故か多数の目線が自分達に向いているのか疑問に思っていた。
「何故か多くの目線を感じるのだが」
「さぁね?私たちの服装って、そんなに変わってるもんなのかな。なのはとフェイトと命とスワンが買ってきた服だからねぇ」
現在Jとルネが着ている服は、なのは達が買ってきた私服である。
この2人には、一般的な私服など無く。ほぼ、制服で過ごしているため急遽買い渡されたものだ。
その経緯は、こんな感じである。
「すっごく、御二人にお似合いな服を買って来ました。サイズは事前に測らせてもらったので、あっている筈です」
「エリオとキャロの引率者として、同行して頂きたいので是非この服を着て行って下さい」
「みんなで話し合って買ってきた服だから、ルネとJに是非着てもらいたいの!命お姉さんからのお願い」
「着れば2人は注目の的、間違い無しデス!」
こんな感じで言い包められ、現在エリオとキャロの引率者として同行しているのだ。
「あはははぁ~♪ここのアイスは見た目から素敵だぁ~♪」
目を輝かせながら、7個重ねのアイスクリームを見つめるスバル。
その横で2段重ねのアイスを受け取るティアナ。
「ほんと、アイスが好きよね。アンタは」
「好き好き、大好きぃ~うふふ♪」
既にベンチで缶コーヒーを飲んでいた凱の横に座るスバルとティアナ。
「凱さんは、アイスいらなかったですか?」
「ああ、缶コーヒーで十分だよ」
それじゃあ、とティアナはスバルとアイスで乾杯をする。
ティアナが少しずつアイスを食べる横で、アイスを丸々1つ一気に食べるスバル。
本当にアイスが好きなんだなと思う凱。
アイスを食べ終わった後、どこへ行くか相談していたスバルたちは不意と凱に質問をした。
「あの、凱さん。少し質問とか良いですか?」
「うん?何かな」
2人は顔を見合わせて頷くと、
「「凱さんが元居た世界での、お話を聞きたいんです」」
スバルとティアナの質問に、少し考えた後こう答えた。
「あんまり2人が思っているほど、カッコイイ話じゃないかもしれないけど、良いかい?」
「「はい」」
飲み終えた缶コーヒーを足元に置き、目線の先にある海を見ながら語り始める凱。
「俺がGGGに入隊した経緯は、こんな感じだよ。18歳の頃史上最年少での宇宙飛行士として最新型のシャトルを駆ってギャレオリア彗星の観測に出たんだ。
その時飛来してきたゾンダー・EI-01と接触して、俺は瀕死の重傷を負ったんだ。死ぬかと思った時、白いライオンが俺を救ってくれた。
そのライオンが、ギャレオン。そのギャレオンがもたらしたオリジナルGストーンを使って父さんが俺を生かす為にサイボーグ手術をしてくれたんだ」
「…サイボーグ」
その単語に少し反応するスバルとティアナ。
「あの時、俺の命を存えさせるにはサイボーグになる以外無かったんだ。だから、父さんの事を悪く思わないでくれよ」
「あ、はい!」「はいっ!」
背筋を伸ばして少し驚きながら答えるスターズの2人。
「その後、ギャレオンがもたらしたオーバーテクノロジーとゾンダーの危機を知った日本政府と国連はゾンダー対策組織としてGGGを設立したんだ。
俺の生命維持には、国の力が必要なのもあったけど俺の命を救ってくれたギャレオンと父さん、泣きながら俺の事を心配してくれた命…そして、
人類を機械昇華しようとするゾンダーに立ち向かえるのは自分しかいないって思ったのが、入隊した理由かな」
それからの凱さんの話は、ゾンダーとの初対決や護少年との出会いなど、私達の好奇心を上げていくばかりだ。
「(凱さん、元はサイボーグだったんだね。それを経緯にゾンダーと戦う勇気を持てるなんて、すっごいよね)」
「(ええ。私だったら絶望してるわね…あ、ごめん)」
「(何で謝るの?私の体は、サイボーグ時代の凱さんの10倍以上幸せだと思うよ?)」
「(それもそうね。あ、そろそろ凱さん達にアンタの体の事を説明しとく?理解してくれると思うけど?)」
凱の話を聞きながら、念話で会話するスバルとティアナだったが急に話が止まったので、どうしたんですかと聞く。
「こういう話は、エリオたちの方が喜ぶと思ってね。後の話は、夜に隊舎で話すよ。そんじゃ、先の話で言ってたゲーセンにでも行くか!」
スバルは、自分の身体の事の話は次の機会にでも話そうと決意しながら、ティアナと一緒に元気良く返事をしてゲームセンターへと向かうのであった。
シャーリーの立てた予定通りに、公園のベンチで休憩を取るエリオとキャロ。
その2人から少し離れたベンチで、自分達の得物であるデバイスを磨くルネとJ。
久しぶりにのんびりとした時間を過ごす中、エリオとキャロはフェイトさんとの思い出を話していた。
その時、スバルさんからの通信を受け回線を開くエリオ。
スバルとティアナから、そっちはどんな感じと聞かれ始めたばかりだと返答する。
これから、公園を出てデパートを回って食事をするなどの予定をクリアして行くと語るエリオとキャロ。
その答えに唖然とするスバルとティアナ。
「まぁ健全だ」
初心そうなスバルでも、色恋沙汰は分かるようだ。
そんな彼女達の話に首をかしげるエリオとキャロ。
「いや、こっちの話」
苦笑いをしながら何でも無いよと答えるティアナであった。
何かあったら、いつでも連絡するようにとお姉さん風を吹く2人に「はい!」と純粋に答えるエリオとキャロであった。
「でも、こっちにはルネさんとJさんが居るのに何かあったらって聞くのかな?」
「さぁ?」
頭に?マークを浮かばせるキャロとエリオの姿があった。
それから予定に沿って、デパートに向かった4人は服などを見て回っていた。
時々ルネとキャロが女性らしい仕草をするのを見て、少し照れるJとエリオ。
"こんな過ごし方も嫌いでは無いな"
優しげな目でそんな風に感じるJであった。
地下道路で事故を起こしたトラックの前でパトカーから降りていた警察官たちが、事故現場の現場検証中に1台の車が到着し座席から女性が降りてくる。
「陸士108部隊、ギンガ・ナカジマ陸曹です。現場検証のお手伝いに参りました」
到着した陸士部隊の隊員に挨拶をした警官は、事故現場へと彼女を通す。
横転したトラックの運転手からの話では、得体の知れないものに襲われたとの事だ。
周囲を見渡すと、陥没した道路で半壊し機能を停止したガジェット1型が調べられており、更に陥没した場所の横には液体が散乱し何かの装置が調べられている。
「これは、生体ポット!?」
予想外の物を発見し驚愕するギンガ。
「ギンガ陸曹」
行き成り車が喋ったので、驚いた警官達だったがギンガ陸曹が「大丈夫ですよ」と言い警棒を持った警官達を制止する。
「これは失礼しました。私はデバイスのAIを改良し車に組み込んだボルフォッグと申します」
礼儀正しい声を聞き、落ち着きを取り戻す警官達。
嘘も方便とはこの事だ。
「それで、ボルフォッグどうしたの?」
「はい。その生体ポットから出たと思われる人物の痕跡と思われるものが地下に続いています」
これは、自分の出番だと直感したギンガは陸士108部隊に通信を入れる。
「―はい。起動六課にも連絡を」
この事件の情報は既にスカリエッティのラボにも届いた。
『レリックを捜索していたガジェット1型6機が全て破壊されています』
「ほぉ、破壊したのは局の魔導士か、それとも当たりを引いたか?」
『確定は出来ませんが、どうやら後者のようです』
「素晴らしい。早速追跡を掛けるとしよう」
ウーノとの会話中だったスカリエッティの下に近づいてくる足音。
「ねぇ、ドクター。それなら私も出たいんだけど?」
「ノーヴェ、君か」
『駄目よ、ノーヴェ。あなたの武装はまだ調整中なんだし』
「今回出てきたのが当たりなら自分の目で見てみたい」
「別に焦らずとも、あれは何れ必ずここにやって来る訳だが…まぁ落ち着いて待っていてほしいな」
「…わかった」
そう言うとノーヴェは、来た道を戻って行った。
『ドローンの出撃は、状況を見てからにしましょう。妹達の中から適任者を選んでみます』
「あぁ…そうだ。彼にも出てもらおう。レリックを嗅ぎ付けて実験サンプル達がやって来るだろうからね」
『ウォーダンを…ですか?』
「そうだ。それと、愛すべき友人にも頼んで置くとしよう」
スカリエッティのラボに表示されていた空間モニターの映像がウーノからある都市を映し出す。
そこには、ルーテシアの姿があった。
「優しいルーテシア、聞こえるかい?レリック絡みだ…少し手伝ってくれるかい?」
エリオ達は、楽しくデート?をしていると何かの物音を察知し立ち止まる3人。
「エリオくん?ルネさんも、Jさんもどうしたんですか?」
「キャロ、何か聞こえなかった?」
「何か?」
「ごとっと言うか、ごりっと言うか」
「恐らくは」
斜め右方向にある路地裏を見つめるJ。
「私もあっちから物音が聞こえたよ。しかも、地下から」
4人は、奇妙な物音がしたと思われる現場へと向かうとそこにはマンホールの蓋があり突如開き、中から小さな女の子が這い出てきたのだ。
待機モードのマッハキャリバーに着信音が響く。
「キャロから、全体通信?」
「何だろう?」
考え込む2人の下にぬいぐるみを抱えて戻ってくる凱。
「ん?何かあったのか」
「こちらライトニング4。緊急事態につき現場報告を報告します。サードアヴェニングF23の路地裏にてレリックと思しきケースを発見。
ケースを持っていたらしい小さな女の子が1人」
「女の子は意識不明です」
「指示をお願いします」
キャロとエリオの報告で慌しくなる起動六課。
なのは達は、スバルたちにお休みの一旦中断を連絡し至急現地へ向かうように支持し自分達も現場へと急ぐ。
部隊長であるはやては、各人員に待機命令を出し、席を離れている隊員たちにも収集を掛ける。
「安全確実に保護するよ。レリックも、その女の子もや」
「了解」
隊長室から司令部へと向かうはやてについて行くリインフォースII。
現場に到着したスバル達は、エリオ達と合流する。
キャロの膝枕で眠るボロボロの小さな女の子を見つめる面々。
レリックの封印処理について質問したティアナに、キャロに封印処理をしてもらったと答えるエリオ。
「それから、これ」
レリックのケースに鎖が絡まっており、もう1つ繋がられていた事を連想させる。
現在デバイスからのデータをロングアーチに転送し調べ中とのことだ。
Jは周囲の警戒のため、ビルの屋上で待機しており、ルネはいつでも戦闘可能なようにデバイスを取り出している。
凱は、傷ついた女の子の頭をそっと撫でる。
"エリオやキャロ、それに護よりも小さい子がこんなにも傷つけられるなんて…こんな仕打ちをした奴は絶対に許せない"
凱の強い気持ちが小さな女の子の頭を撫でる左手のGストーンを輝かせる。
その光に若干眉を動かすが、その反応に気づく者は居なかった。
『それでは、2人とも作戦通りにね』
「了解しましたわぁ~ウーノお姉さま」
「了解。行ってきます」
ウーノからの通信を切り、座席に座るクアットロとディエチ。
「そういう事で、ウォーダンのおじ様~現地まで送って下さいまし」
「…お願いします」
『心得た』
3人が乗っているのは、全長50m以上ある巨大な人型兵器。コクピットが2つあるため、その1つを改造し2人が乗れるようになっている。
その大きな巨体は既に起動状態であり、出撃を待つばかりの状態だ。
「スレードゲルミルよ、行くぞ!疾風の如く!!」
ウォーダンは、スロットを最大にして出撃する。
スレードゲルミルが格納されていた施設は、シルバーカーテンと同じ原理で隠蔽されており出撃を察知される事は無い。
巨大なドリルを両肩に装備し、ドリル状の角を持つ白亜の巨人が大空を飛翔する。
「凱よ、再び合間見えん!」
次回予告
君たちに最新情報を公開しよう。
地下でレリックを捜索するフォワードメンバーに襲い掛かるガジェットと召喚士。
大空から巨人が舞い降り、再び激突する2人。
そんな彼らを嘲笑うかのように放たれる長距離砲撃がストームレイダーを襲う。
勇者王リリカルガオガイガー THE MYTHOLOGY
NEXT機動六課のある休日【後編】
次回も、このチャンネルでFINAL FUSION 承認!
これが勝利の鍵だ!
【エクシードモード&ボルフォッグ】
これで、最後のうp。
レナとk1はひぐらしキャラとして。
ここに書いているルネの私服は矛倉としてうp。
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